気象庁の kt → m/s 換算表は公開されていた
昨日、「台風の最大風速のkt → m/s は「式」ではなく「換算表」があるかもしれない話」という記事を書きましたが、公開した翌日に、気象庁が同じ換算表を公開していることがわかりました。
前記事では、台風位置表とベストトラックを2,157点で突き合わせて、kt→m/sは式ではなく固定の対応表で決まっているらしい、という20組の表を作りました。この20組について、公式の表と比べて答え合わせをしてみました。
見つかった表
気象庁のサイトに「速度、風速、距離の換算表」というページがあります。台風情報などで使う「ノット→km/h」「ノット→m/s」「海里→km」の3つの表が載っています。
- 現行版(2020年〜): https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kansanhyo.html
- 2019年まで版: https://www.data.jma.go.jp/typhoon/position_table/kansanhyo-2019.html
版が2つありますが、風速(ノット→m/s)の表は両方の版で同一でした。2020年に変わったのは距離(海里→km)の表だけのようです。
このページは、台風位置表の年別ページの末尾からリンクされていました。
また、「ノット」から「m/s」、「海里」から「km」の変換については予報用語の速度、風速、距離の換算表をご参照下さい。
とあります。前記事の照合でPDFを取りに行った、そのページの下にありました。PDFのリンクだけを機械的に拾っていたので、末尾の文章は読んでいませんでした。
20組を当てた
前記事で作った20組は↓です。
35→18 40→20 45→23 50→25 55→30
60→30 65→35 70→35 75→40 80→40
85→45 90→45 95→50 100→50 105→55
110→55 115→60 120→60 125→65 140→70
これを公式の表に当てたところ、20組すべてが一致しました。
前記事で別の出典から補った2つの値も、公式の表と一致しています。
| kt | 前記事での裏取り | 公式の表 |
|---|---|---|
| 125 | 位置表2件(MEGI / HAIYAN)で65m/s | 65 |
| 140 | 防災科研の公表値70m/sから | 70 |
公式の表の全体
風速の表は、5kt刻みで5〜300ktまでの60行と、括弧付きの3行を合わせた63行です。
5→3 10→5 15→8 20→10 25→13 30→15 (34→17)
35→18 40→20 45→23 (48→25) 50→25 55→30 60→30
(64→33) 65→35 70→35 75→40 80→40 85→45 90→45
95→50 100→50 105→55 110→55 115→60 120→60 125→65
130→65 135→70 140→70 145→75 150→75 155→80 160→80
165→85 170→85 175→90 180→95 185→95 190→100 195→100
200→105 205→105 210→110 215→110 220→115 225→115 230→120
235→120 240→125 245→125 250→130 255→130 260→135 265→135
270→140 275→140 280→145 285→145 290→150 295→150 300→155
括弧付きの34 / 48 / 64ktは、台風の階級の区切りの値のようです。気象庁の「台風の番号の付け方と命名の方法」に、台風を英語で表記するときの最大風速に応じた階級として
Tropical Storm(TS):最大風速34ノット以上48ノット未満
Severe Tropical Storm(STS):最大風速48ノット以上64ノット未満
Typhoon(TまたはTY):最大風速64ノット以上
とあり、この区切りが34 / 48 / 64ktです。前記事で使ったベストトラックにも、各時刻の階級としてこのTS / STS / TYが入っています。
3つをm/sにするとそれぞれ17 / 25 / 33です。気象庁が「台風」を「最大風速(10分間平均)がおよそ17 m/s(34ノット、風力8)以上」としているのは、この34kt→17が出所のようです。
ベストトラックのktは5kt刻みなので、この3行は前記事の照合には現れませんでした。公式の表を見て初めて知りました。
規則で書けるか
前記事の主題は「換算は式ではなく表」でしたが、公式の表が手に入ったので、改めて規則を探してみました。
「50kt未満はkt × 0.514444を1m/sに丸め、50kt以上は5m/sに丸める」という規則を当てはめると、括弧付きの3行を除く60行のうち59行が再現できました。
外れるのは40kt→20の1行だけです。40 × 0.514444 = 20.58なので、規則なら21になります。
前記事で、3ペアしか無い段階で最初に躓いたのが、この40kt→20でした。公式の表でも、その1行だけが規則から外れています。
ちなみに、この規則は僕が当てはめてみたものです。気象庁がそう定めていると書いているわけではありません。
前記事の訂正
前記事に「気象庁がそう公表しているわけではない」と書きましたが、これは誤りでした。表は公開されていました。
前記事の主張のうち、何が正しくて、何が誤りで、何が変わるのかを並べると↓のようになります。
| 前記事の主張 | 公式の表で |
|---|---|
| kt→m/sは固定の対応表 | 正しい(公式の表が存在) |
| 線形換算の四捨五入とは一致しない(55→30など) | 正しい(40→20は規則でも説明できない) |
| m/s→ktは30m/s以上で2通りに割れる | 正しい(55〜170ktは隣り合う2組が同じm/s) |
| 20組の表 | 正しい(全組一致) |
| 130 / 135ktは表に入れない | 変わる(実測には無いが公式値はある) |
| 気象庁は公表していない | 誤り |
逆向きの「30m/s以上はすべて2通り」は、公式の表では55〜170ktの範囲で成り立っています(55/60→30、65/70→35、…、165/170→85)。その外では175kt→90が単独になります。実在の台風は最大140ktなので、前記事の主張には影響しません。
kinoatsuでの扱い
前記事で「実データに1件も無いので表に入れない」とした130ktと135ktは、公式の表に値がある(130→65、135→70)ので、公式値として表に足しました。実データには現れませんが、公式値なので推定で埋めたことにはなりません。
表示は「2026年の台風」のページで見られます。
おわりに
気象庁の換算表について纏めてみました。式ではなく表があるのだろう、という前記事の予想どおりでしたし、照合から作った20組が公式の表と一致していて良かったです。
参考
- 気象庁「速度、風速、距離の換算表」(現行版): https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kansanhyo.html
- 同(2019年まで): https://www.data.jma.go.jp/typhoon/position_table/kansanhyo-2019.html
- 台風位置表(リンク元):
https://www.data.jma.go.jp/typhoon/position_table/table{年}.html - 気象庁「台風の番号の付け方と命名の方法」: https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-5.html
- 前記事: 台風の最大風速のkt → m/s は「式」ではなく「換算表」があるかもしれない話